無給医という言葉を聞いたことはありますか?
無給医とは診療をしても報酬をもらえない医師のことです。
2018年10月26日にNHK・ニュースウオッチ9にて特集が組まれ、報道された「無給医」。
※実際の記事へのリンクはこちら→ただ働きする医師たち〜知られざる“無給医”の実態

(※NHK NEWS WEBより引用)
そんな無給医問題に対して活発に取り組まれてる中山祐次郎先生(@NakayamaYujiro)、たぬきち先生(@TOTB1984)。
無給医について、NHKの記事版が出ました。
無給医についての情報提供を呼びかけています。医師の皆さん、ぜひよろしくお願いいたします。https://t.co/eGVKLo6m3y— 中山祐次郎@小説「泣くな研修医」2/7出版 (@NakayamaYujiro) 2018年11月3日
NHKの記者の方から電話取材を受けました。
自分を含めた殆どの医師よりも無給医問題に詳しく、現状を改善する事で医師と患者の双方にとって良い医療を目指す熱意をお持ちの方でした。
「無給医について」と記載してこちらのフォームに投稿すれば、担当者の方に届くそうです。 https://t.co/uFdYwoaX90— たぬきち (@TOTB1984) 2019年1月31日
たぬきち先生は所属施設に勤務実態を説明し、未払いだった賃金を支払ってもらうまでの経緯をnoteにまとめたことでも話題になりました。
<無給医の残業代請求について>|たぬきち @TOTB1984|note(ノート) https://t.co/4xruwKT7jg
— たぬきち (@TOTB1984) 2019年3月17日
そんなお二人に無給医問題を中心に対談していただきました。
無給医を問題にした理由

「泣くな研修医」著者・中山祐次郎先生のケース

ただ非常勤の立場で、月15日分の給料で実質25日分ほどの勤務を丸2年くらい続けていました。
医師6−7年目の時です。
でも「もう少しなんとかならないかな」という気持ちはありましたね。
ただ同じ轍を他の人が踏むというのはどうなのか。
システムの「継続性」という意味ではよくないなぁと。
当時からそういう問題意識がありましたね。
みんな同じことで困っているんだなって。
無給医について、NHKの記事版が出ました。
無給医についての情報提供を呼びかけています。医師の皆さん、ぜひよろしくお願いいたします。https://t.co/eGVKLo6m3y— 中山祐次郎@小説「泣くな研修医」2/7出版 (@NakayamaYujiro) 2018年11月3日
それでヤフーニュースに書き、Twitterで情報を募集してみたんです。
Yahoo!ニュース個人に、「無給医」について記事を書きました。
なぜタダで働くのか?「無給医」たちの現実 〜医師の視点〜(中山祐次郎) – Y!ニュース https://t.co/MqANZQw7sp#NW9 #無給医 #Yahooニュース
引用をご許可下さったhttps://t.co/MprUIzwLRj様@JoynetMS、ありがとうございました。
— 中山祐次郎@小説「泣くな研修医」2/7出版 (@NakayamaYujiro) 2018年10月28日
ヤフーに書いた「無給医」の情報を募集しています。確実にそれが行われている状況を把握し、問題解決につなげたいと思っています。
そこで、実際に無給医経験のある方、DM頂けないでしょうか?お願いしたい条件は本名、所属と状況をお教えいただくこと。秘密は墓場まで持っていきます。— 中山祐次郎@小説「泣くな研修医」2/7出版 (@NakayamaYujiro) 2018年11月8日
そうしたら20人以上もの方から(無給医についての)DMをいただけたんです。
予想以上でした。
来ても2,3人くらいだろうなと思っていたので。
凄まじい反響をいただいたなと。
予想外に多い。
49歳以下の45.9%が 「無給医」経験あり
「調査はhttps://t.co/2astHsN4dmを通じて11月13日から16日の4日間で実施。431人から回答があり、無給医の経験があるのは45.9%(198人)だった。内訳は男性176人、女性22人、平均年齢は40.2歳だった」https://t.co/yNY81CfQDi
— 中山祐次郎@小説「泣くな研修医」2/7出版 (@NakayamaYujiro) 2018年11月18日
昨日のNHK放送を受けて、文部科学省が無給医について調査することになりました。
まずは存在が認められるところから。続けます。ヤフーに記事を書きました。無給医問題、文科省が調査を検討 医師の視点(中山祐次郎) – Y!ニュース https://t.co/BhbTQ0H9IL
— 中山祐次郎@小説「泣くな研修医」2/7出版 (@NakayamaYujiro) 2018年11月22日
産婦人科医・たぬきち先生のケース
もちろん下っ端ですし、1400円は仕方がないと思ってました。
働いた分の給料をもらえるならいいと思っていたし、そこに不満はなかったんです。
僕は大学院生だったので、当直や土日の勤務は免除されてました。
なので、ものすごく不満があったというわけではなかったです。
ですが大学から支給される給料は月に5〜6万円。
時給1400円計算でも月に15万円前後になるはずなのに、いくらなんでもこれは労働に見合ってないんじゃないかと。
時給1400円で100時間くらい働いて、月の給料が5万円程度だったんですか??
ただ1回大学内で「これはおかしいんじゃないか」と声を上げたんです。
ですが「先輩たちみんなはこうやってきて、それで医療が成り立っている。」
それが医局内での共通認識でした。
もちろん若手の医師はおかしいと思っていましたが「上の先生たちがそう言うから仕方ないな…」と脈々と続いてきた文化みたいなものがありましたね。
臨床にも駆り出されている大学病院の大学院生に質問です。
研究のみに従事している院生は除きます。
毎月の大学からの給料はどの程度でしょうか?
なお、僕は6万円です。— たぬきち (@TOTB1984) 2018年12月22日
ただそこで理不尽な反抗はできない。
やるからには法にのっとってやりたかったんですよ。
時給1400円については自分は同意したから全然構わない。
だけどそれで月5〜6万円の給料はおかしい。
そして大学に交渉の場を作ってもらったんです。
結局「この勤務日程表で月5〜6万はおかしいでしょ。」と事務の方も言ってくれたんです。
最終的に働いた分の180万円がもらえることになりました。
難しい医師の労働問題

文句を言わない医者が悪い
空気読んじゃってますよね。
先輩たちがやってなかったことだから、自分もやらない。それはちょっと申し訳ないみたいな。
個人的には「現場の医者が文句言わなきゃ変わらないだろ」と思ってます。
法律的に問題があることを医者が強いられてるわけなので。
それに対して強いられている側が声をあげなければ周りも助けようがないですよね。
なので医者の労働環境に関しては医者自身が声をあげるべきなんですよ。
医師からのご意見が集まっている旨をNHKの記者の方から伺っています。
ありがとうございます。
“無給医という立場で社会保障がない”というのは、こういった理不尽なデメリットすら受け入れなければなりません。
同様に保育園探しに苦戦している医師は多数います。
何せ身分としては”無給”なので。 https://t.co/xdqBCkTyp0— たぬきち (@TOTB1984) 2019年2月1日
また、せっかくNHKが問題を提起して文科省の調査までこぎつけたにも関わらず
“「無給医はいない、適切に給与は支払われている」という結論になる事は避けたい。その為には現場の医師の声が必要だ”
とまでおっしゃって頂きました。— たぬきち (@TOTB1984) 2019年1月31日
Twitterで繋がる
例えば今がもし20年前だったら、たぶん僕も一人で声をあげて、たぬきち先生も一人で声を上げて…。
お互い独自に声を上げたけれど、お互い死んでいた可能性が高かった笑
そう考えると、今ならTwitterなどのSNSでこうやって一緒になって、色んな方々から情報をいただいて、お互いエンパワーされて、個人の声がちゃんと反映されるようになりましたよね。
徐々にまっとうになっていってるのかもしれませんね。
僕も始める前は何かよくわからないツールだなと思ってましたし。
つぶやくって、何をつぶやいたらいいんだろうって笑。
声なき声が集まって一つの大きな声になった。
これは近代が成熟していく上での自然の流れですよね。
もともとTwitterもnoteもブログも全部興味なかったんです。
もしTwitterをしていなくても、間違いなく単独で交渉して未払い給与を請求していました。
ですが活動しているうちに、これはみんなと共有すべきだなと思えてきたんです。
みんなが真似してくれたらいいなと。
ですが自分は少なくとも「働いた分をください」と言っているだけなんです。
たぬきち先生は本当は支払われた額に満足していないかもしれませんが、その屍を越えてみんなが動いてくれれば…という思いがあるんですね。
まずはそれに従って交渉するところからですね。

医者の善意、そして医者の中での分断
自虐的な人も多い。僕みたいな半人前が給料をもらってもいいのかってすら思ってる。
ただ、そこにつけ込んでいるこのシステムが腹立たしいです。
不思議すぎますよね。
お人好しが損するとか、疲れ切ってるとか、そういう感じだよね。
休日や夜間など時間外に呼び出されて患者さんのために何かするのは苦痛じゃない。
医者ですから。
でもそれを「全部タダですよ、当たり前ですよ」っていう姿勢は問題だと思います。
もちろんそんな大学病院ばかりではありませんが。
不満がない方もたくさんいますもんね。
「自分たちの時はタダだったんだから我慢しろ」、「嫌なら(医者を)やめろ」。
こうしたコメントが医者から結構来るんですよ。
医師の方からも
“バイト収入があるから別によくね”
という意見が散見されます。
しかし、無給医は雇用主である大学病院からの本来あるべき社会保障が一切ありません。
病気・事故などがあれば即座に無収入です。養う家族がいれば悲惨です。
自分は流行性角結膜炎で2週間休業した際は完全無収入でした🤷♂️ https://t.co/yTtNt6hH92— たぬきち (@TOTB1984) 2019年2月1日
医者の中での分断、世代間での分断。
自分は割とMなので別にやりたい手術をやるからその分無給で働けというのはそんなに嫌いではないんです。
けれど、それを人から「当たり前だろ」と言われるとさすがにそれは違うよねと。
同業者から「お前は受け入れて大学院に入ったんだろ」というのはやっぱり違うし、そもそもそんなことを医者同士でやってる場合ではないんです。
システムとしての「継続性」
僕の場合はもう少し冷酷なんです。
継続性を考えた上で、そんな無給でお涙ちょうだいでこれから100年続けられるのかっていう話なんです。
特に質の高い医療をやるのであれば尚更です。
今は過渡期ですが、それでも「質の高さを求められるのなら、高度な技術を身につけるためなら無給でもいい」という医者はまだまだいると思います。
でもそれは永続的な医療ではない。継続性を考えたら、無理でしょう。

(※NHK NEWS WEBより引用)
医者ってそもそもインフラですからね。
自分も全く同じ意見です。
水道、ガス、電気、医者、みたいな。
そもそも億万長者になるような職業じゃないですもんね。
大学の医者は自分たちの労働環境に関してあまりにも無知なんだなと感じました。
他の施設の状況を知らない人も多いですね。
他を知らないから耐えられていると思うし、耐えられているから後輩に強いることも当たり前だと思ってるんです。
部活と同じですよ笑。
でも実はそういった意見の方は、自分が高度な医療や技術を提供する事で本来なら得られる対価・権利を自ら放棄しているだけなんですよね。
お互い首を締め合っちゃってるだけなんです。
無給医はやはり一筋縄ではいかない問題です。
そんな無給医問題について熱心に取り組んでいる、中山先生とたぬきち先生。
その内にある熱い想いを語っていただきました。
医療者にとっても、大学病院にとっても、そして医療を受ける患者さんにとっても、すべてがwin-winになるような世界を目指していかないといけないですね。

この日は話が尽きることがありませんでした。
対談いただいた中山祐次郎先生、たぬきち先生ありがとうございました。
中山祐次郎先生の新著・「泣くな研修医」
新米医師の葛藤と成長を圧倒的リアリティで描く感動の医療ドラマ。
読み始めたら止まらず、気づいたら号泣していました。
おすすめの1冊です。
Twitterなどのオンラインできっかけが出来て、そしてオフラインで繋がる。
そうすることで本当に色々な視点に出会えるなと感じています。
こうした繋がり、さらに広げていきたいですね。
お付き合いいただき、ありがとうございました。