対談

外科医・中山祐次郎、産婦人科医・たぬきち 「無給医問題」について熱く対談

 

どくしょー
どくしょー
どうも、どくしょーです。 

 

無給医という言葉を聞いたことはありますか?

 

無給医とは診療をしても報酬をもらえない医師のことです。

2018年10月26日にNHK・ニュースウオッチ9にて特集が組まれ、報道された「無給医」。

※実際の記事へのリンクはこちら→ただ働きする医師たち〜知られざる“無給医”の実態

無給医問題

無給医問題(※NHK NEWS WEBより引用)

 

そんな無給医問題に対して活発に取り組まれてる中山祐次郎先生(@NakayamaYujiro)、たぬきち先生(@TOTB1984)。

 

 

 

たぬきち先生は所属施設に勤務実態を説明し、未払いだった賃金を支払ってもらうまでの経緯をnoteにまとめたことでも話題になりました。

そんなお二人に無給医問題を中心に対談していただきました。

 

無給医を問題にした理由

対談

「泣くな研修医」著者・中山祐次郎先生のケース

泣くな研修医

 

中山
中山
僕は厳密な意味での無給医は経験していないんです。

ただ非常勤の立場で、月15日分の給料で実質25日分ほどの勤務を丸2年くらい続けていました。

医師6−7年目の時です。

中山
中山
その時自分は修行の身ですし、勉強だから良いやと思っていました。

でも「もう少しなんとかならないかな」という気持ちはありましたね。

 

どくしょー
どくしょー
「何か得るためには何かを犠牲にしないといけない、何かを我慢すべきだろう」そういう風潮がありますよね。

 

中山
中山
それは一部、自分も同意するところではあります。実際それで得られた技術もありました。

ただ同じ轍を他の人が踏むというのはどうなのか。

システムの「継続性」という意味ではよくないなぁと。

当時からそういう問題意識がありましたね。

中山
中山
そうした中で無給医の話をNHKが報道した時に「これだ!」と思ったんです。

みんな同じことで困っているんだなって。

 

 

中山
中山
自分の中でくすぶってた無給医に対する思いや、友人にも同じ境遇の人がいましたので、今がチャンスだと思いました。

それでヤフーニュースに書き、Twitterで情報を募集してみたんです。

 

 

中山
中山

そうしたら20人以上もの方から(無給医についての)DMをいただけたんです。

予想以上でした

来ても2,3人くらいだろうなと思っていたので。

凄まじい反響をいただいたなと。

 

 

中山
中山
これは大きな問題が潜んでるなと思いましたね。

産婦人科医・たぬきち先生のケース

 

どくしょー
どくしょー
たぬきち先生はどうでした?

 

たぬきち
たぬきち
僕も中山先生に連絡した1人です。

 

たぬきち
たぬきち
僕はもともと、時給1400円っていう契約だったんですよ。

もちろん下っ端ですし、1400円は仕方がないと思ってました。

働いた分の給料をもらえるならいいと思っていたし、そこに不満はなかったんです。

 

中山
中山
時給1400円でやるのは診療ですか?

 

たぬきち
たぬきち
もちろん。主に外来業務などです。

僕は大学院生だったので、当直や土日の勤務は免除されてました。

なので、ものすごく不満があったというわけではなかったです。

 

たぬきち
たぬきち
けれど外来や処置などの業務は普通にありました。月100時間くらいは働いてたんです。

ですが大学から支給される給料は月に5〜6万円。

時給1400円計算でも月に15万円前後になるはずなのに、いくらなんでもこれは労働に見合ってないんじゃないかと。

 

どくしょー
どくしょー
ん???

時給1400円で100時間くらい働いて、月の給料が5万円程度だったんですか??

 

中山
中山
それって最低賃金割ってませんか💦?

 

たぬきち
たぬきち
割ってます、割ってます。

ただ1回大学内で「これはおかしいんじゃないか」と声を上げたんです。

ですが「先輩たちみんなはこうやってきて、それで医療が成り立っている。」

それが医局内での共通認識でした。

もちろん若手の医師はおかしいと思っていましたが「上の先生たちがそう言うから仕方ないな…」と脈々と続いてきた文化みたいなものがありましたね。

 

どくしょー
どくしょー
それはひどいですね… 。

 

 

たぬきち
たぬきち
最初は我慢していました。けどやっぱりおかしいなと。

ただそこで理不尽な反抗はできない。

やるからには法にのっとってやりたかったんですよ。

時給1400円については自分は同意したから全然構わない。

だけどそれで月5〜6万円の給料はおかしい。

 

たぬきち
たぬきち
それで勤務実績とタイムカードを揃えて弁護士に相談しました。

そして大学に交渉の場を作ってもらったんです。

結局「この勤務日程表で月5〜6万はおかしいでしょ。」と事務の方も言ってくれたんです。

 

中山
中山
その辺の抜かりのなさがよかったんですね。

 

たぬきち
たぬきち
「弁護士に違法ってことは確認してますので」とちゃんと話を持っていきましたからね。

最終的に働いた分の180万円がもらえることになりました。

 

難しい医師の労働問題

医師の労働時間

文句を言わない医者が悪い

 

たぬきち
たぬきち
僕は無給医問題に関しては「文句を言わない医者がちょっと悪いんじゃないか」という思いもあるんです。

空気読んじゃってますよね。

先輩たちがやってなかったことだから、自分もやらない。それはちょっと申し訳ないみたいな。

 

中山
中山
それであれば医者は搾取されても仕方ないっていう見方もひとつありますよね。

 

たぬきち
たぬきち
実はNHKの方に協力してもらったり、社会問題にしてもらっていて言うのも何なんですけど、

個人的には「現場の医者が文句言わなきゃ変わらないだろ」と思ってます。

 

たぬきち
たぬきち
人に頼ってちゃいけないだろと。

法律的に問題があることを医者が強いられてるわけなので。

それに対して強いられている側が声をあげなければ周りも助けようがないですよね。

なので医者の労働環境に関しては医者自身が声をあげるべきなんですよ。

 

 

 

どくしょー
どくしょー
まさに働き方改革ですね。

 

Twitterで繋がる

 

中山
中山
声を上げる。

例えば今がもし20年前だったら、たぶん僕も一人で声をあげて、たぬきち先生も一人で声を上げて…。

お互い独自に声を上げたけれど、お互い死んでいた可能性が高かった笑

そう考えると、今ならTwitterなどのSNSでこうやって一緒になって、色んな方々から情報をいただいて、お互いエンパワーされて、個人の声がちゃんと反映されるようになりましたよね。

徐々にまっとうになっていってるのかもしれませんね。

 

たぬきち
たぬきち
それこそTwitterって医者全体ではマイナーツールですよね。

僕も始める前は何かよくわからないツールだなと思ってましたし。

つぶやくって、何をつぶやいたらいいんだろうって笑。

 

一同
一同
分かります、分かります笑。

 

たぬきち
たぬきち
ただこういうツールを使って、医者同士がコミュニケーションをとれるのは大事だなって感じました。

 

中山
中山
これは大げさに言えば、医者にとってのアラブの春なんです。

声なき声が集まって一つの大きな声になった。

これは近代が成熟していく上での自然の流れですよね。

 

たぬきち
たぬきち
お互いが今まで分断されすぎていただけなんですよね。

もともとTwitterもnoteもブログも全部興味なかったんです。

もしTwitterをしていなくても、間違いなく単独で交渉して未払い給与を請求していました。

ですが活動しているうちに、これはみんなと共有すべきだなと思えてきたんです。

みんなが真似してくれたらいいなと。

 

たぬきち
たぬきち
もちろん時給1400円自体にはいろいろと意見があると思います。

ですが自分は少なくとも「働いた分をください」と言っているだけなんです。

 

中山
中山
今までひどくマイナスだったところをゼロに持っていこうとしているだけですからね。

たぬきち先生は本当は支払われた額に満足していないかもしれませんが、その屍を越えてみんなが動いてくれれば…という思いがあるんですね。

 

たぬきち
たぬきち
たぶん皆さんにもあるんですよ、自分の時給の契約書。

まずはそれに従って交渉するところからですね。

 

医者の善意、そして医者の中での分断

 

たぬきち
たぬきち
医者になる人ってすごいお金が欲しい人ばかりじゃないと思うんですよ。

自虐的な人も多い。僕みたいな半人前が給料をもらってもいいのかってすら思ってる。

ただ、そこにつけ込んでいるこのシステムが腹立たしいです。

 

中山
中山
医者の患者さんに対する善意がなぜか賃金という形で搾取されている。

不思議すぎますよね。

お人好しが損するとか、疲れ切ってるとか、そういう感じだよね。

 

たぬきち
たぬきち
そうなんです。

休日や夜間など時間外に呼び出されて患者さんのために何かするのは苦痛じゃない。

医者ですから。

でもそれを「全部タダですよ、当たり前ですよ」っていう姿勢は問題だと思います。

 

たぬきち
たぬきち
一般病院でもそういうところはあると思うのですが、大学病院はあまりにもおかしいんじゃないかなと。

もちろんそんな大学病院ばかりではありませんが

不満がない方もたくさんいますもんね。

 

たぬきち
たぬきち
あと今回の問題でツイートしたときにちょこちょこリツイートされたことが、

「自分たちの時はタダだったんだから我慢しろ」、「嫌なら(医者を)やめろ」。

こうしたコメントが医者から結構来るんですよ。

 

 

中山
中山
「嫌ならやめろ理論」ありますね。僕も言われたことあります。

 

たぬきち
たぬきち
一般の人からならそういう意見はまだ分かります。けど医者からコメントされるんですよ。

医者の中での分断、世代間での分断。

自分は割とMなので別にやりたい手術をやるからその分無給で働けというのはそんなに嫌いではないんです。

けれど、それを人から「当たり前だろ」と言われるとさすがにそれは違うよねと。

同業者から「お前は受け入れて大学院に入ったんだろ」というのはやっぱり違うし、そもそもそんなことを医者同士でやってる場合ではないんです。

 

システムとしての「継続性」

 

中山
中山

僕の場合はもう少し冷酷なんです。

継続性を考えた上で、そんな無給でお涙ちょうだいでこれから100年続けられるのかっていう話なんです。

 

どくしょー
どくしょー
ちょっと難しいですよね…。

 

中山
中山
お金を儲けないとビジネスが続かないのと同じで、正当な評価なくしては継続できないですよね。

特に質の高い医療をやるのであれば尚更です。

 

たぬきち
たぬきち
ほんとそうですよね。「質の高い医療をやりたければむしろ無給で働け」というのは良くない。

今は過渡期ですが、それでも「質の高さを求められるのなら、高度な技術を身につけるためなら無給でもいい」という医者はまだまだいると思います。

でもそれは永続的な医療ではない。継続性を考えたら、無理でしょう。

 

無給医問題

(※NHK NEWS WEBより引用)

 

たぬきち
たぬきち
なにも大金よこせって言ってるわけじゃないです。

医者ってそもそもインフラですからね。

 

中山
中山
そう、医者ってインフラですよね。

自分も全く同じ意見です。

水道、ガス、電気、医者、みたいな。

 

たぬきち
たぬきち
そうなんです。

そもそも億万長者になるような職業じゃないですもんね。

 

中山
中山
でも働いた分だけ正当な報酬をもらうのは、近代の人間がやっと勝ち得た権利ですよね。

 

たぬきち
たぬきち
自分みたいに10年目くらいで市中病院も、大学病院も、クリニック勤務も色々と経験できたことは良かったと思います。

大学の医者は自分たちの労働環境に関してあまりにも無知なんだなと感じました。

他の施設の状況を知らない人も多いですね。

他を知らないから耐えられていると思うし、耐えられているから後輩に強いることも当たり前だと思ってるんです。

部活と同じですよ笑。

 

中山
中山
その中の人にとっては自分やたぬきち先生が色々言うことに「ちゃちゃいれんなよ」「余計なこと言うなよ」という人もいそうですよね。

 

たぬきち
たぬきち
いますよね、確実に。

でも実はそういった意見の方は、自分が高度な医療や技術を提供する事で本来なら得られる対価・権利を自ら放棄しているだけなんですよね。

お互い首を締め合っちゃってるだけなんです。

 

無給医はやはり一筋縄ではいかない問題です。

 

そんな無給医問題について熱心に取り組んでいる、中山先生とたぬきち先生。

その内にある熱い想いを語っていただきました。

 

医療者にとっても、大学病院にとっても、そして医療を受ける患者さんにとっても、すべてがwin-winになるような世界を目指していかないといけないですね。

 

 

 

この日は話が尽きることがありませんでした。

対談いただいた中山祐次郎先生、たぬきち先生ありがとうございました。

 

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Twitterなどのオンラインできっかけが出来て、そしてオフラインで繋がる。

そうすることで本当に色々な視点に出会えるなと感じています。

こうした繋がり、さらに広げていきたいですね。

 

 

お付き合いいただき、ありがとうございました。

ABOUT ME
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どくしょー
現役医師(整形外科専門医、麻酔科標榜医、産業医)。医師となって10年以上経つ中で、「これからどうキャリアを積むのか」「したいことは何なのか」「どう生きていきたいのか」などの悩みに直面。じっくりと考えるため「時間が必要」と感じ、結婚・転職をきっかけに半年間休職。その間、嫁と世界一周の旅へ。帰国後は整形外科医として再出発。そして医師×〇〇を探す旅へ。